2007年10月24日 (水) 2007年10月23日 (火) 2007年10月16日 (火) 2007年10月10日 2007年10月2日 (火)

ネアンデルタール人類の謎」「ニ・ニ六事件 全検証」
奈良貴志の著作。著者は慶応の考古学専攻出身。パレスチナを通って出アフリカを果たしヨーロッパに展開したネアンデルタール人は、我々第二次出アフリカの新生人類クロマニヨンとヨーロッパで同居することになったが、死滅してしまう。そして、唯一、我々クロマニヨンが生き残り栄華を極めることになる。どのように生活していたか、どのような心を持っていたのか、などの疑問に答える形式で論を進める。しかし、著者は確定的なこと以外は喋らないという、きわめて科学的な観点に立ったために「あるいはこうしていたかもしれない」という類の物言いはしない。そのため、設問に明快な解を与えるということではなく叙述としては甚だ消化不良のような展開になっている。しかし、それはいたしかたない。
いずれにしても、ネアンデルタール人の時代まで複数のホモ属の人類が並存していたということは確認しておきたい。
「ニ・ニ六事件 全検証」は北博昭の著書。93年に東京地検倉庫にあった事件の公判記録が公開された。それに基づく事件の解明である。
皇道派上層部の逡巡・裏切り、事件を作った安藤・磯部・栗原・野中など青年将校のあまりにも杜撰な計画と場当たり的な行動、そして状況に身をゆだねる稚拙な軍事技術と政治技術。安藤輝三隊を主力とする混成部隊のあまりにもひどい無統制ぶり、西田税北一輝が事実上決起に参画していないが、首謀者として検挙されていく悲喜劇、石原莞爾の一時的逡巡と最後の反乱部隊断固軍事制圧の意志。30代天皇の怒り、当初は安藤との個人的友情から行動を注目されていた秩父宮の怒りと鎮圧への強い意志。
結局は、反乱部隊もそして軍部主流も、天皇も同じ狢であり、特別な差異はなく、主権者としての天皇とその制度に縛られていたゆえの茶番に結果していくのであった。結局は皆天皇ファシストだったのだ。でもおもしろかった。



「脱法企業 闇の連鎖」
有森隆+グループK著「脱法企業 闇の連鎖」
グッドウィルグループ加ト吉ICF大林組平成電電IXIシルバー精工アドテック中央青山監査法人などの企業犯罪を解説し、暴く本。まずは面白かった。そもそも、あやしそうな企業経営者はその顔に怪しさがにじみ出ている、というのはうがちすぎだろうか。グッドウィルグループを率いる折口雅博に人品のいやしさがにじみ出ている。青年実業家と持て囃し、経団連の理事にまでさせた財界人の人品の低さも知れたものだ。経営会議では王位継承順に席が決められており、営業成績が悪い所長は立ったまま面罵されるというところに、人品の卑しさがあらわれていないか。
コムスン=グッドウイルの介護事業の大半を継承するニチイ学館もいやしい会社だ。厚労省雇用保険事業の職業訓練業務を受託し、高い教科書を買わせ、教育をし、最後は医療事務試験を受けさせ、自社に登録させて、病院に派遣するというシステムだが、東北などでは、700円に届かない低い賃金で派遣しているのだ。
そういう会社が介護の最大手に躍り出たわけだ。
また、グッドウィルグループが買収したクリスタルは、ネットカフェ難民の生血を吸って営業している会社だ。

ところで、日研総業も調べて見る価値がある。
同社は、81年創業で、代表取締役会長 清水 勝子 、代表取締役社長 清水 真一 である。北海道・東北に19、関東甲信越に31、東海に14、近畿北陸8、中国四国に11、九州に7箇所、全国82箇所に事業所を展開している。本社は東京大田区蒲田。他、採用事務所・ジョブイン・プラザというのを、例えば北海道では9箇所、青森3ヶ所、秋田3ヶ所、岩手2ヶ所、宮城2ヶ所と研修セーター、山形にはなくて、福島に3ヶ所あり、都合、北海道東北には23事務所がある。



映画
善き人のためのソナタ」「ミュンヘン」「ルワンダの涙」「ルムンバの叫び」
最初のものは旧東ドイツの監視機関シュタージの監視活動と監視される舞台監督の話。ずいぶん露骨な監視活動開始で本当かいなという疑念があったけど、旧社会主義諸国は多かれ少なかれ極度の監視社会であったわけだ。理念を掲げてソ連の軍事力の下での政権樹立や暴力による政権樹立することは結局は暴力的な人権抑圧を伴う政権維持へと向かうのかもしれない。そして、そもそもプロレタリア独裁前衛政党論は多数者支配という統治機構の実態的関係を表現するものから事実としてのパルタイの抑圧的機構へと変じていくのだった。多数者支配は、多数者の利益の実現でしかないのだが、それゆえ民主制度を前提とするのだが、多数者の利益を代弁すると強弁するパルタイの権力集中に堕してしまうのだった。だから、シュタージの上官の無理念や大臣の無理念が現れることとなる。しかし、89年のベルリンの壁崩壊を受けてシュタージの窓際族が職場放棄をしていくさまはそうだったのだろう。さらに、言わば悪役の旧大臣と悲劇のヒーローの舞台監督が旧東ドイツの崩壊後立ち話をするというところに、いい崩壊を遂げたのだと思わせるところがある。旧被抑圧者による旧抑圧者への復讐はない。それが民主主義なのかもしれない。そして、シュタージ資料の全面公開もすごい。その復讐ということがないということを前提として全面公開されている、ということだ。抑圧されていた者は、よくもしてくれたなと昔の抑圧者に復讐の念を持ち抑圧の実態を調べるもの、と思うのにそれがない。
主題はシュタージ要員が監視活動を通じて自分がしている活動の不当性を認識するに至るということだった。
ミュンヘン」は72年のハタハの非公然軍事部門のブラックセプテンバーによるミュンヘンオリンピックイスラエル選手団宿舎占拠・人質事件の顛末の映画。イスラエル・秘密情報機関モサドによるこの事件への復讐を担うことになった男の物語だ。男は復讐の殺戮の過程で、共に殺しあうことに疑問を持つにいたる。でも・・・男に殺戮対象者の情報を提供し続けたルイとその一族はどのように一団だったのだろうか。そして男はそもそもどのようにしてルイに接近することが可能だったのだろうか。
72年の事件とモサドPLO非公然軍事組織との相互殺戮、岡本・安田などが参加するPFLP・GOに支援された日本赤軍によるロッド空港事件などを経て、74年にアラファトは国連に招かれ演説するに至ったというのも事実なのだ。ようやくパレスティナが世界の注目を浴びるに至ったのだった。
ルワンダの涙」
イギリス人の民間支援者の眼を通したルワンダ内戦発生のさま。94年にフツの大統領を乗せた飛行機が墜落し、ツチへの復讐心に燃えた虐殺が始まったのだ。「ナタで殺されたくはない、あなたの銃で射殺してください」と国連部隊のベルギー将校に訴えるところに虐殺のすさまじさが現れている。結局、国連軍は無力であったのだった。
「ルムンバの叫び」はフランス映画
ルムンバがなぜどのようにしてコンゴ独立運動の指導者となったのかの説得的な説明がなかった。そのため、前半はきわめてつまらなかった。しかし、旧宗主国ベルギーの画策によるクーデタが起きてルムンバ一は家族とともに逃避行を余儀なくされる。途中でつかまり、空港からトラックに乗せられる。僕はその時の悲しそうなルムンバの姿を白黒のテレビニュースで見て衝撃を受けたのだった。ルムンバは、その後、白人傭兵などの手によって殺害されたのだった。ベルギーも結構悪いのね、って感じだ。ルムンバ役の俳優はルムンバに似ていた。



(水) 荒井一作亡くなる
荒井が心筋梗塞で10月9日になくなったと清からメールがあった。突然の知らせで声も出ない。
早大ML研で一緒にい、そして、早大学生学術文化会議で一緒だった。彼の稲城の実家にも何回か泊まりに行った。卒業した後、多摩川河川敷で草野球もした。
彼が助監督をしていたときには新宿西口のボロアパートに住んでいたが、留守にも関わらずその奇妙な部屋に行ったこともある。
荒井は、しばらくして、打海という名前で作家デビューを果たしたのだ。同じ様にババの電話ボックスで突然死したノチのことを、荒井は書くと数年前言っていたのに・・・
こうして、あの目くるめく学生時代の友人はポツポツと姿を消していくのだ。
ショックと悲しさ・・・
明日の新聞の死亡欄には出ているのだろうか・・・



神聖ローマ帝国
菊池良生の著書。なぜに「神聖」なのか、そしてなぜに「ローマ帝国」なのか、それを紐解く。カロリング朝フランク王カールの即位は西ローマ帝国の再建と目された。ここでは権力基盤の補強を策するローマ教皇レオ3世が西ヨーロッパの支配者として現れたカールをローマ・バチカンで深紅の衣をまとわせ帝冠を授けたのだった。これは、ローマ帝国の正当な継承者であるビザンツに事前の承諾を受けていないものであり、それはなぜか、そして黙認したビザンツにはどのような事情があったのかは、菊池は語らない。そして、教皇からの受冠は、ビザンツでもコンスタンチーノプル大主教からの受冠としてありえないことではないが、それは「元老院と市民の歓呼」を伴うものであった。つまりは、ローマの政治原理の枠が必要であった。それなしの受冠にカールの不安はいかばかりであったか、知らない。そして、偽証門である「コンスタンティヌス大帝の寄進状」を根拠に受冠を取引として教皇領の寄進を受けたのであった。まことに、レオ3世の政治的策謀の能力は高かった。こうして、教皇からの受冠が形式として確立する。
そして「神聖」の問題は後で書く。今日はここまで。